紫色のクオリアの感想
作者はうえお久光さん。私はこの人のことを全くと言っていいほど知りませんでしたが、この本を読んでとても興味がわいています。キャラクターの内面の描写が多いけれど、私個人としてはさらさらとエピソードをたどっていくよりも好みの文体です。
スポンサードリンク
物語は全編が波濤(はとう)マナブの語りで送られます。
普通の少女であるマナブから見た、自分以外の人間がロボットに見えるという特徴を持った少女、毬井ゆかりの姿が序盤の主な内容です。不思議な感性を持つゆかりとそれを受け入れ友達になったマナブ。でもゆかりの目は、ただ不思議だの一言で片付けられるものではなかったのです。
この先の内容は明かしませんが、マナブがゆかりを思う気持ちに、私は心を打たれました。
また、タイトルにもあるクオリアという言葉などの学術的な単語の数々が、この物語について私が深く考えるきっかけとなり、没頭できたのでしょう。
ただ一つだけ、欲しいものを求める心の在りようが描かれた作品でした。合わない人には合わないかもしれません。けれどもし絵柄が気に入らないからといって買わないのは、面白い作品を探す上ではもったいないかもしれません。
いい作品でした。