宝石吐きの女の子(著:なみあと)の一巻を読みました。
読んでみた感想は、一言で言うと「よくできた児童小説、をライトノベル風にアレンジ」といった感じでした。最後の「おしまい」の一言まで読んだ後は、心の内にしばらくほくほくしたものが残っていました。
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主要な登場人物は2人で、宝石店の店長である青年スプートニクと、従業員クリューです。
スプートニクはなぜかよく分からないけれど、作中で最強の人物です。盗賊団やちょっとしたギャングを手持ちの道具だけでばったばったとなぎ倒してしまいます。
性格は悪い、というか悪ぶっていますが、クリューに対しては時たま優しい言動をみせたりもします。
クリューは幼い女の子で、「体内でできた宝石を吐いてしまう」という特異な体質を持っています。
かつて助けてもらったこともあって、スプートニクに恋しているのは登場人物の全員が知るところ。というほどにわかりやすい少女です。でもだからといって、いつもからかってくるスプートニクとのけんかも絶えない模様。
クリューとスプートニクの、お互いを想いながらもその愛情の種類が異なっている様が、ちょっとだけ不憫ながらも微笑ましく描かれていました。
クリューの恋心は本当ですが、スプートニクとは年が離れすぎていて、その想いが真実スプートニクに伝わっているかといったらよくわからないんですよね。スプートニクの言動は嘘と真実が入り交じっていますから、それもあって断言はできない感じでした。
一方スプートニクはスプートニクで真実クリューのことを大切に思っていますが、それは親が子供に向ける父性のような愛情なのは間違いありません。というか、本当に好き好き言ってたら完全にロリコンです。そしてスプートニクはロリコンではありません。
……これはクリューの恋は実らない未来が固く約束されているようなものですよ。まあ、このまま2人が大人になるまで一緒にいられれば、まだまだクリューの恋が実る可能性は十分にありますね。
この第一巻では2つの事件について描かれていて、分量で言えば2つ目の魔法少女事件の方に重きを置かれています。
スプートニク宝石店を狙う魔法少女ナギたんと、それを追う魔法使いソアランとイラージャが物語に関わってくる、この作品の世界観の説明も兼ねたお話となっていました。
強敵ナギたんの犯行予告に対し、スプートニクとクリューがお互いのことを思いやりながらその日を迎えるまでが印象的なお話でした。
結末の方も、かなり印象的なんですけどね……。
クリュー達に対してどれだけ愛着を持てるかが、この物語を楽しめる鍵なんじゃないかと思います。
全体を通して、優しさに満ちあふれた世界でした。