『アクタージュ act-age』1~5巻の感想。荒削りな天才演者の成長に引き込まれる1作

 私が少年ジャンプを雑誌で読まなくなってずいぶん経ちました。
 今コミックスで買っているのは『ハイキュー!!』、『ワールドトリガー』くらいです。だから連載している作品の動向についてはほとんど把握できていません。せいぜいがコミックスに付いてくる、ジャンプの新作案内のビラを流し見する程度です。
 
 だから『アクタージュ』という作品についても、そもそも存在すら把握していませんでした。
 一応ビラは見ていたので「ああ、この作品か!」とパッとはきたのですが、きちんと内容を把握したのはごく最近です。ずっとバトルものだと思ってました(主人公の目つきが戦に挑む戦士の目だった)。

 
 実際には役者の物語だと知り、1巻をお試しのつもりで読んでみましたが……面白いですね、コレ。お試しのつもりが、先が気になって一気に5巻まで買ってしまいました
 6巻発売前に、5巻までの感想をまとめておこうと思います。


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(画像は『アクタージュ act-age』マツキタツヤ、宇佐崎しろの1,2巻表紙より引用)

目次

興味を持った理由

 ずばり最近知ったブログで紹介されていたからです。元々人気の作品ですし、発掘したとかそういうのは一切ありません。
 それにそのブログで紹介されていたのも去年の初秋の話ですしね……。
003 「アクタージュ」 弱さを持ちつつ、周りを巻き込みながら貪欲に成長する破壊的な主人公から目が離せない -この夜が明けるまであと百万の祈り-
 
 まあこの人のブログの過去記事を漁っているときに見つけたんですが、この記事を読もうと思ったのは表紙の絵が気になったからです。知らないマンガを読もうとする基準の一つに「自分が好きな絵柄かどうか」という点があり、結構大きなウェイトを占めていると思いますが、まさにアクタージュの宇佐崎しろさんの絵は私の好みにピッタリ合っていたというわけですね。
 
 
 3巻の表紙を見て気になりましたが、1,2巻の表紙もシンプルながらグッときますね。紙の本で買っていたら思わず表紙を横並びにしてしばらく鑑賞していたことでしょう。
 しかし少年ジャンプでこの手の絵柄は珍しい気がしました。ストーリーもいわゆる美少女キャラメインに進められているのも含めて、もっと年齢層高めな雑誌(アフタヌーンとかフラッパーとか)で見かけやすいタイプかな、と。

 ただ、ジャンプで人気であるからには絵柄や話題性だけでなく、ストーリーも面白いのだろうと思ったところで購入を決意しましたね。

感想

 この作品は現在5巻まで発売されており、5月初めの6巻発売を私は今楽しみにしているところです。
 特に5巻の終わりは良いところで終わってしまっているため、続きがどうなるのか気になって仕方ありません。

 
 アクタージュは作品内で章分けされているわけではありませんが、1巻初めの導入部分、3巻まで続くデスアイランド編、そして現在5巻まで続いている銀河鉄道の夜編に分かれています。
 恐らく銀河鉄道の夜編は6巻で終わることになるでしょう。だからこそ、もうすぐ最新刊発売とはいえ、5巻を読み終えた直後は続きが気になってヤキモキしたものです。

 今回は1巻ごとではなく、先ほど行った章分けに基づいて、大きなストーリーごとの感想を書いていきます。

1巻(導入)の感想

・夜凪景という圧倒的才能を持った主人公
 物語は「演じるべき人に完全になりきる」才能を持った、夜凪景という主人公抜きに語れません。

 悲しむ演技をする場所でただ「悲しくなる」だけでそれを表に出そうとしなかったり、なりきった人の正義感から台本にない行動を取ってしまったりという、普通ならあり得ない暴走する夜凪の成長の様子が物語では描かれていきます。
 そんな夜凪にハラハラドキドキさせられながらも、圧倒的な速さで成長していく彼女の才能に引き込まれていくのが楽しい作品でした。

・黒山墨字という映画監督
 彼はオーディションに落ちた夜凪の才能を掘り上げる人物です。
 自分の映画のキャストとして育て上げるために、彼女に試練を課したり仕事を斡旋する役割を持っています。

 第一話でダブル主人公ばりの存在感を出しておきながら、正直5巻まで目立った活躍がありません。彼がいなければ夜凪の物語は始まりませんでしたし、彼の作る映画というのがアクタージュという作品において大きな意味を持つであろうことは間違いありませんが、やっぱり出番が少ない。
 いや、メインキャラクターではあるんですけど、ホントに2巻以降環境的にも離ればなれだし、ほとんど夜凪中心に話は回っていくので出番が少ないんですよね……。

 
 とはいえ彼はこの物語で最も象徴的な立ち位置にいる人物でもあります。
 夜凪景という圧倒的な才能に可能性を感じ取り、実力的にはまだまだ荒削りな彼女を手助けしていく……。
 黒山以外にも夜凪の才能を前にして引き込まれていく人物は多く登場しますが、作中の人物や、読者である私たちをも魅了して止まない夜凪景の特徴を体現しているのが黒山なんだと思いました。
 

1~3巻(デスアイランド編)の感想

・デスアイランドという映画撮影の中で成長する夜凪
 1巻でデスアイランドの演者になるためのオーディションを受けてから、3巻のクランクアップまでに夜凪は大きな成長をします。
 アクタージュの友情・努力・勝利の中で特徴的なのが努力です。
 デスアイランド編序盤から中盤にかけて夜凪はカメラアングルを意識した演技を身につけることになります。役者としてのステップアップとしてカメラを意識した演技というのはイメージしやすいですが、そのトレーニング方法と活用法がぶっ飛んでましたね。

 いや、カメラで撮ってもらって頭の中のイメージとすり合わせるって言うのは、分かるけど……分かるけどできるかっ! って感じ。すぐ習得できるのもすごいけど、あくまでアクタージュは夜凪が圧倒的な才能を持っていることを前提としたお話なのですんなり読めましたね。
 そしてそのテクニックの驚きの活用方法とともにゲロインデビューとはたまげました。

 夜凪さんはいつも私たちの想像を超えていくようです。

・最大のライバル、百城千世子
 デスアイランド編では早くも夜凪と肩を並べる輝きの持ち主として、すでに世間からスターとして認められている百城千世子という役者が登場します。
 2巻の表紙が正直一番好きですね。千世子ちゃんカワイイ……。

 彼女もまた、夜凪とは違う種類の天才として登場します。
 ゲーム的な例えで言えば夜凪は攻撃力が高い代わりに防御力が低い不安定な強さを持っているのに対し、千世子は防御を中心に全能力高めな完璧タイプ
 彼女もまた役者の仕事に全てを捧げたストイックさを持っていて、色々計算して動いているのが分かっていても憎めないキャラとして描かれています。
 
 
 アクタージュはキャラの魅せ方が面白いマンガだな、とここら辺で再確認。
 
 夜凪と千世子の2人の天才がぶつかり合い、お互いがお互いの影響を受けて一歩成長したのがデスアイランド編の見せ場でしたね。
 水に流された後の夜凪の最後の一言はちょっと予想外だったけど、千世子の姿を見て、ここから夜凪も役者としての自分を意識し始めたのかな、と思います。そしてその自覚が4,5巻でより問われてくる、と。

4、5巻(銀河鉄道の夜)の感想

・成長しすぎる夜凪
 4巻では持ち前の才能と不器用さのアンバランス具合が表に出ていましたが、5巻で講演が始まってからの夜凪は完全な役者でしたね。
 デスアイランド編で千世子が魅せていた役者としての覚悟やリーダーシップを、5巻の段階で見せてくるとは思いませんでした。正直まだまだ夜凪は成長を問われる側だと思っていましたから。それどころかアキラの成長を問う立場に立つとは……。
 こいつ、さては主人公じゃないな? って疑うレベルでしたよコレは。
 
 
 その夜凪の精神的な成長のきっかけとなったのは最終的に、巌さんの「ああ、これが幸せか」の一言だったのかな、と思います。
 公演前日までの演技でも阿良也は「とても良くなった」と言っていましたが、巌さんは本番五日前に「いつ死者になるんだ」と夜凪に問いかけています。そこからもだんだん演技の腕を上げていったのでしょうが、物語的に見て「いつ死者になったか」と問われれば、巌さんすら自覚できていない彼の本音を耳にしたあの瞬間なのかな、と。

・存在意義を問われる星アキラ
 正直、個人的には4巻はともかく5巻はそこまでノリノリで読み進められたわけではありません、夜凪の部分に関しては。
 というのもアクタージュを夜凪の成長物語として読んでいたところもあったので、この成長速度が私の楽しめる上限を超えてしまったのかと思います。
 恐らく講演が終われば元に戻るだろうとは言え、夜凪の性格や容姿にもかなりの変化がありましたからね。そこも要因の一つかと。
 
 
 ただ一方で、これまでも第一話の段階から才能がないキャラとして描かれてきた星アキラに関する物語としては、5巻も非常に楽しく読み進めることができました。
 彼もまた、役者として人を喜ばせるために頑張ってきた過去を持つ憎めない人物です。第一話では完全に黒山の噛ませ犬役扱いだったのにね。
 
 アキラもまた役者の仕事に人生をかけてきたわけですが、百城千世子ほどに自分を魅せることもできなければ、夜凪や阿良也のように役を作り込むこともできません。
 そんな彼にできる戦いとはなんなのか、舞台に立つ資格があるのか。
 アキラの悩みや不安が伝わってきて、徐々にアキラの方に感情移入して読み込んでしまいます。しかし良いところで6巻に続く!
 これが週刊連載をコミックスにしたときの欠点ですよね。本来なら一週間ヤキモキさせるための引きで3ヶ月以上待たされるわけですから。

おわりに

 
 4,5巻の感想でほとんど阿良也に触れていないっていう。
 まあ役者として夜凪の先を行く人物として出てきて、確かに面白い人物ではあったけど、阿良也の出番全部ひっくるめて夜凪の物語として頭の中で処理しちゃったので印象が薄くなってしまったのかな。
 
 5巻最後の夜凪のアドリブとか、阿良也は訳に入っているとはいえ自分は保っているわけだから、内心どんなこと思ってるのかは気になります。そこも含めて6巻が楽しみってことですけどね。
 
 
 それでは。


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